2024/10/05

【エルデンリング】神獣獅子舞、異邦の譚・火払い

  始まりはそう。何でもなかった。嵐があったわけでも、星が落ちたわけでもない。


 それは、ただいつの間にかそこにいたのだ






 それは、深い月明かりの晩。

 夜の森を、月に照らされ、獣が歩いていた。


 獣は、木々を通り抜け、落ちた実を嗅ぎ、ただ月明かりに歩く。楽しげな散歩のように、ぐんぐんと森を歩く獣は無邪気にみえた。


 そうして歩いていた獣は、何度目かの月が雲の瞼を纏う頃に、ふと木々が開けた場所に出た。

 月明かりは薄ら眼に、途切れ途切れに広場を照らしている。あちらこちらには視線から隠れるように、暗闇たちが蠢いていた。


「……」 暗い広場に獣は僅かに足を止めたが、再び歩き出す。

 夜目が効くのか、それとも好奇心は止まらないのか? 獣は臆することもなく、鼻を鳴らしながら広場へと入ると、ぐるりと広場を見渡し始めた。


 ────広場には幾本の光の線が刺さっている。幻想的で、童話的な、まるでスポットライトの様に。

 それを前にした獣はまず、光の強い左に視線を向けた。


 左、何も無い。原っぱが主役のように手を広げ、月光に照らされている

 前、きのみが生えている。美味しそうだ。

 み… 


 獣は場の片隅に視線を向けると、ぴたりと動きを止めた。何故気づかなった。片隅に、何かがいる。


「……!」


 獣の目線と注意は、片隅の何かに注がれた。だが、足は引き、耳は細かく動いている。




 ……雲がゆっくりと動き、月が瞼を開く。森の開けた広場を、何かを照らし始める──


 広場の片隅に、何かが倒れている。白い髪のような鬣、大きな目、口から飛び出す鋭い牙。


 ──獅子だ、獅子が倒れていた。だが、獣は獅子をより深く警戒している。

 月明かりに照らされたその獅子は、まさに異形としか言えなかったからだ。


 頭には捻れ曲がった角が幾つも生え、胴は異様に長い。

 開いた口には鋭い牙が並んでいるが、それは下顎にしかなかった。

 そしてその内側には、人や亀のように平べったい歯が並んでいる。


 ……だが、何よりも異質なのはその胴体であった。月に照らされ行くにつれ、よく見えた。

 もとは綺羅びやかであったろう、赤布と鉄で彩られた胴体。その布地の下からは人の手足が生えている。五本指の手が2つに、同じく五本指の足が4つ。



「グググ……」


 獣は唸る。それは警戒的好奇心なのだろう。これは、何だと……


 「ググッ」獅子、いや違う。獅子ではない。

 獣は知らない。知っていても関係がない。獣は警戒していた。だが……


 サー、と風が草木を吹き撫で、焼けた匂いを届ける。突如として獣は駆け出し、広場を離れた。


 



 それから一分もしないうちに、広場に何かが聞こえてくる。

 ハッハ、タッタ。ハッハ、タッタ。必死の息遣いと足音。だが息は小さく、音の間隔は短い。子どものものだ。

 草むらががさりと揺れ、ハッ、と子供は、子どもが広場に飛び出し、駆け続ける。いや駆けようとした。


「…っぁ」 だが、転んだ。

 月はこれから起こる事を厭ったのか、再び眼を閉じる。すぐさまに暗闇が蠢き出し、子どもを隠すかのように広場を覆────


 そして僅かに遅れ、ガチャガチャと金属が擦れる音と、赤い松明のが届く。

 林の中から、ぬっと、軽鎧をきた男たちが現れた。彼らは様々に、その貌に、情を浮かべている。


 嗤う者、堪える者、倦む者、見据える者。


 すなわち、皆殺しだ。


 彼らは武器を手に子供に迫る。ガチャリ、ぐらり。ガチャリ、ぐらり。


 彼らが歩くと、武具が鳴り、松明が揺れ、異音の中で影が崩れる。影が揺れ、変じてゆく。声と共に揺れ、変じてゆく。

 暗い森の中で、怪物のように、異形のように、人ならざるもののように。


「……!」 子どもが息を呑む。その照らされてゆく顔は、まるで彼の村のようだった。



 ────燃えている。松明は傲と燃えている。赤く、泥のように暗く、燃えている


 昏く略奪者を照らしている────


「──……」


 獅子の、──人の手が動いた。


 腕は獅子の頭に添えられ、足は獅子の足へと代わる。添えられた手が、獅子の咆哮を伝える。


「────!!」



────咆哮が松明を揺らがせ、を弱らせる



「…! dArE……」


「!! nAnNdA、@/wO:[!!」


 獅子に気づきくと、子供は後ろを見やり、賊は武器を構えた。

 月明かりが、彼らを照らし始める──


「…………」


 獅子は、獅子は佇んでいる。賊を、賊の火を見やり、佇んでいた。


 ────雲の幕が剥がれ、月の光が、広場を、舞台を照らす。



 舞いが舞いが、なされる──



 ──左脚が立ち上がり、踏み鳴らされる。歯が噛み鳴らされ、伝え響く。それは荒れ狂う様、怒りを演じる舞い。

 即ち冬、即ち嵐、即ち雷。それ即ち、荒れ狂う天を示す。ならば演じなされるは、神獣にほかならず。



 舞いが舞いが、舞いはなされる──



 ──四肢が持ち上がり、地を踏みつけ、四肢がかき鳴らされる。

 それは舞、払いの舞。災禍払う、神獣の舞。神獣獅子舞。



 舞いは舞いは、舞いなされる── たとえ異邦の地、異郷の空下だろうと、舞いなされる。


「────!!」


 四肢が立ち上げ、獅子を立ち上げ、舞をなす。火を火を火を、払い舞う。




 神獣獅子舞、異邦の譚・火払い

















•子ども

 村から逃げてきた。ただの子ども。

 巻き込まれ死んだか、生き延びたか、それは今のところ分からない


・兵士

 賊(兵士) 仕事でやってきた。強さは普通。

 彼らの火が起こしてしまった原因の一つとなった。


・獣

 一般通過獣。かしこく賢い。狼に似ている。

 そんなことはないと思うが、もしかしたら火を嫌がって何処かから流れてきたのかもしれない。

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