短編 ある男について
2024/08/23 追記:本編キャラの誰か、というわけではないです
男には誇りがある。登りつめたという誇り。一塊の捨て駒から駆け上がった、意地だ。
男には目的がある。ただ登りゆく目的だ。何がしたいかなど、とうに忘れた。
男には記憶がない。父母の顔はもう薄れることすらない。ただ、消えるのみなのだろうか。
男には苛立ちがあった。下らぬ目的は覚えている苛立ちだ。顔もしたい事も、わからない。
男には過去がある。登りつめた過去は──
「先輩。つきましたよ。さあ! 行きましょう!」
「オーナー。ついでに私たち居残り組に、飯でも買ってきてください」
「────」男は立ち上がると彼らの後を追い、扉の向こうに消えた。自身が何を呟いたのか、男はわからなかった
新たに気付いた過去は、絡みついた。不快ではない、ただ胸が苦しくなることがあるただそれだけのはずだ。
男には諦めがある。安い強化人間を慕うものがいた。もう上り詰めることはなく、戻ることなど、できないのだろう。
2024/08/21
2024/08/28 追記
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